(旧環境)アグロドルイドの「元気なリス」と「つぎはぎの大工」の比較とおすすめのリスト

目次



ナーフを受けて使用率が大きく減った上に、新拡張がすぐに出るのであんまり意味のない議論だけど、いろいろ考えて書き留めていたらそれなりの文章量になったので投稿しました。

現在、小拡張に収録されていた「つぎはぎの大工」、「植え付け」を入れた型と、前から使われている「元気なリス」と自由枠に「自然学の予習」を入れた型がHSReplay上ではアグロドルイドの代表的な2つのリストになっているので、この3枚程度の違いが統計にどういう影響を与えるのかを見ていきます。

まずはどういう影響が考えられるか列挙してみて、それを統計で確認する。という流れになっています。


統計を見る前に

まずは、仮説を立てる。

  • 「元気なリス」採用の利点
    • 「どんぐり」が引ける場合があるので、ドローの価値が高まる。
    • コストを踏み倒してミニオンを召喚できるので、ミニオンの生存を前提としたカードを活用しやすい(「堆肥化」、「草攻凶花」など)。
    • 「どんぐり」を序盤に沢山引けば、上振れを狙うことができる。*1
  • 「つぎはぎの大工」採用の利点
    • 選択呪文をドローできるので、デッキが圧縮でき強いカードを引く確率が若干上がる(「レイザーメインの戦闘衛兵」など)。
    • 「植え付け」のバリューを最大限活用できる。
    • 「草攻凶花」を引かなくても、小規模なバーストダメージを起こせる。(「草攻凶花」への依存度が下がる)

これらから、データにどういう影響があるかを考える。

  • 元気なリス
    • ドローカードのDrawnWRが上がる。(「堆肥化」,一応「土木作業員」も)
    • 元気なリスのキープ率が高いなら、任意のカードのドローに対して、一定の割合で「どんぐり」を引いたことによる正の寄与がある。(キープ率が低いほどその効果は小さくなるが、キープ率は 80%程度で十分高い。)
    • ミニオンの生存を前提としたカードのDrawnWRが上がる。
  • つぎはぎの大工
    • 「植え付け」は引かれやすいカードであり、DrawnWRはデッキの勝率付近に収束する効果を受ける。
    • 再現性*2の増加は勝率自体を底上げする。

比較

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HSReplayで検索して出てきたリスト(https://hsreplay.net/decks/#rankRange=LEGEND&playerClasses=DRUID&archetypes=52)

今回は、上から1つ目と3つ目を利用する。

「元気なリス」採用のリスト(WR=54.3%)

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「元気なリス」採用のリストのDrawnWR-TurnPlayed分布

まずは、比較ではなくこのグラフだけを見て何がわかるかを確認する。

一般論として、こういうアグロデッキではTurnPlayedが大きいほど、DrawnWRが低くなる。実際、TurnPlayedの大きい「先生のペット」や「灰枝」は比較的DrawnWRが低い。

逆に言えば、このリストで強いカードは、「草攻凶花」、「堆肥化」、「重荷運びラバ」、「レイザーメインの戦闘衛兵」、「エルーンの巫女」、「カワイイ侵入者」、「ガーディアン改造屋」あたりであるとわかった。

「つぎはぎの大工」採用のリスト(WR=52.8%)

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「つぎはぎの大工」採用のリストのDrawnWR-TurnPlayed分布

全体的にDrawnWRのばらつきが小さくなったことがわかる。(前者は分散が4.59、後者は2.98)

これは、ドローしたカードによる勝率の変化が小さい、つまり再現性の高さを示している。例えば、ワイヤーローグ、クエストOTKDHのようなドローが強いデッキは、特別にドローされやすいカード(クエスト「最後の決闘」、しつこい商売人など)を除けばDrawnWRの分散は小さくなりやすい。

統計の比較

それぞれのデッキの統計で、DrawnWR - WRを計算した表を下に示した。

WR(デッキの勝率)で差を取るのは、試合で使われる頻度が高いとDrawnWRは勝率に近づくので、勝率の違うリストを生のDrawnWRで比較するのは不適当であることによる。

共通したカードのDrawnWRを抽出して、添え字が1のほうが「元気なリス」を含むリストで、添え字が2のほうが「つぎはぎの大工」を含むリストである。

共通のカード DWR-WR_1 DWR-WR_2
カワイイ侵入者 1.1 -1.6
ガーディアン改造屋 1.4 -3.4
土木作業員 -3.5 -2.1
礁のドルイド -3.2 -2.3
ボーンチュワーの喧嘩屋 -4.1 -3.3
マジウザ・オ・トロン -2.5 -1.2
レイザーメインの戦闘衛兵 0.3 1.7
堆肥化 -0.2 -4.1
重荷運びラバ 0.2 -3.5
エルーンの巫女 0.9 -3.2
公園のヒョウ -1.9 -2.2
先生のペット -5.4 -5.5
灰枝 -4.3 -5.7
草攻凶花 -0.8 -2.8
  • 「元気なリス」採用のリストは正の値をとっているカードが多い。

→ドローという行為がより強いことを意味している。

  • 「カワイイ侵入者」、「ガーディアン改造屋」、「堆肥化」、「重荷運びラバ」、「エルーンの巫女」、「草攻凶花」などの先に強いカードとして挙げたカードがリストごとの差が大きい(差の絶対値で2以上)。
  • 「レイザーメインの戦闘衛兵」は比較的差が小さい(差の絶対値が1.4)。

→「レイザーメインの戦闘衛兵」は両方のリストで最重要カード。それ以外の強いカードは、「元気なリス」を入れたリストのほうが重要性が高まる。

「土木作業員」のDrawnWRは上がらなかった。「元気なリス」にキープ枠が奪われて、試合途中で引く頻度が増えるなどして、ドローというよりはソフトトーントとして機能するような場面が増え、バリューを十分に発揮できなかったなどの原因が考えられる。

まとめると、


  • 「元気なリス」採用

    • 強いカードにアクセスしたときにより強く使いやすいので、そういうカードのDrawnWRが高くなった。
    • 「元気なリス」の断末魔の発動を前提として、DrawnWRが全体的に高まる(=試合が多少長引いても勝ち筋がある)
  • 「つぎはぎの大工」採用

    • 全体としてDrawnWRが勝率より若干下に分布し、長期戦には「元気なリス」型よりは向かない。
    • DrawnWRのばらつきが相対的に少ないので、安定した出力が可能。

個人的な見解

概して、「元気なリス」採用のリストのほうがよさそうな印象を受けた。

「つぎはぎの大工」採用のリストは、猶予がなくて、より早く強い動きを行う必要のある星界配列ドルイドのような相手に特に有効で、他にはバフがバーストを生み出しやすく最後のひと押しになるクエストOTKDHにも若干プラスに働く。

「元気なリス」採用のリストは、持続的な展開が試合を動かしうる相手であるワイヤーローグ、盤面で負けそうなときに上振れがあると助けになるフェイスハンターなどでは強い。

自分のいる順位(レジェンド1000位以内くらい)だと、ここ一週間ではフェイスハンターが一番多く、ウォリアー、ワイヤーローグあたりが次に多い。そのあたりをあわせて考えると、「元気なリス」のほうがよさそうに見える。

おすすめなリスト

  • 「元気なリス」を採用すると、強いカードを強く使える可能性が上がる
  • 「つぎはぎの大工」を採用すると、強いカードを引く確率が上がる

というのを並べてみると、両方を合わせて使うのも自然な発想に見える。

「土木作業員」は1コストの枠の中ではTurnPlayedが小さい割にDrawnWRが低いカードなので、これを「元気なリス」に変えてしまったほうがうまく回る気がしてくる。

自分の戦績

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↓使ったリストのDeckCode

AAECAZICAqbhA9agBA7XvgPevgOSzQO50gOM5AO57AOI9APJ9QPs9QPR9gOB9wOE9wOsgASwgAQA

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リスト

利用したExcelファイル

www.dropbox.com

*1:上振れ下振れは、統計上では平均化されるので、この記事ではその平均した寄与が「つぎはぎの大工」のリストと比べてどうかということになる。

*2:ここで言う再現性は、基本的にそのデッキの強い動きを行える頻度のこと